無理数の集合の完備な距離の例とか

{(0,1)}の完備な距離

 {d(x,y)=\left| \displaystyle \frac{1}{x}-\frac{1}{y}+\frac{1}{x-1}-\frac{1}{y-1}\right|}

とか。

 

 

{\mathbb{R}}の完備でない距離

 {d(x,y)=|e^x-e^y|}

とか。{x_n=-n}はコーシー列。

 

 

{(0,\infty )}の完備な距離

 {d(x,y)=\left| \displaystyle \log \frac{x}{y} \right| }

とか。{x_n=1/n}はコーシー列でない。

 

 

 ・{\mathbb{Q}}の完備な距離

存在しない。あったとすればベールの範疇定理(リンクはWiki)から{\mathbb{Q}}は第二類。一方{\mathbb{Q}}は可算、一点集合は全疎だから即ち{\mathbb{Q}}は第一類。これは矛盾。

 

 

無理数の集合{\mathbb{P}=\mathbb{R} \setminus \mathbb{Q}}の完備な距離

{\mathbb{Q}}を整列して{\{ q_n : n \in \mathbb{N}\}}として、

{d(x,y)=|x-y|+ \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{2^n}\min \{ 1 , \left| \max_{i\leq n} \frac{1}{|x-q_i|}-\max_{i\leq n} \frac{1}{|y-q_i|} \right| \} }

距離になっていることは明らか。

位相が合致していること。任意に{x\in \mathbb{P} }と正の数{\varepsilon }をとり、{ \displaystyle \sum_{n=k}^\infty \frac{1}{2^n} \lt \displaystyle \frac{\varepsilon }{3} }となる自然数{k}をとる。{\displaystyle \sum_{n=1}^k \frac{1}{2^n}\min \{ 1 , \left| \max_{i\leq n} \frac{1}{|x-q_i|}-\max_{i\leq n} \frac{1}{|y-q_i|} \right| \} }は連続ゆえ、ある{\delta '}があって、

{|x-y| \lt \delta ' \Rightarrow \displaystyle \sum_{n=1}^k \frac{1}{2^n}\min \{ 1 , \left| \max_{i\leq n} \frac{1}{|x-q_i|}-\max_{i\leq n} \frac{1}{|y-q_i|} \right| \} \lt \frac{\varepsilon }{3} }

あとは{ \delta = \min \{ \varepsilon /3 , \delta '\} }とおけば、{ |x-y|\lt \delta \Rightarrow d(x,y) \lt \varepsilon }

完備性。この距離でコーシー列なら普通の距離でもコーシー列ゆえ{\mathbb{R}}では収束、従って有理数に収束する無理数の点列がこの距離でコーシー列とならないことを示せば良いがこれはほぼ明らか。

{(x_n)}有理数{q}に収束する無理数列とし、{q=q_N}なる自然数をとれば、{m\gt N ,k}について

{ \displaystyle \left| \max_{i\leq m} \frac{1}{|x_j-q_i|}-\max_{i\leq m} \frac{1}{|x_k-q_i|} \right| \to \infty \ (j \to \infty )}

だから各{k}に対して大きい{j}をとれば{d(x_j,x_k) \gt 1/2^N }

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

族正規でない完全正規空間

児玉永見に載っていた例です。

 

{P}非可算集合とし、{Q}をそのべき集合とする。{Q}上で自然数値(ただし{0}自然数に含めるとする)をとる写像全体を{X}とする。

{ p \in P }に対して、{ x_p:Q \to N , q \mapsto 1 \ ( p \in q ) , q \mapsto 0 \ ( p \not \in q ) }と定め、{X_0=\{ x_p : p\in P \} }と置く。{Q_0}{Q}の全ての有限部分集合の集合とする。

{X}に次で位相を定める;

 ・{x\not\in X_0}の各点はそれ一点が開である。

 ・{x_p\in X_0}{r\in Q_0}{n\in\omega}に対して、

  {V(x_p,r,n)=\{ x_p\}\cup \{ x : x(q)\geq n+1 \ (\forall q \in Q) , 2|(x(q) - x_p(q)) \ (q\in r) \}}

  と定義して、各{r\in Q_0}{n}に対する{V(x_p,r,n)}全体を{x_p}の近傍ベースとする。

  ただし、{2|(x(q) - x_p(q))}{2}で割り切れること、すなわち{x(q) - x_p(q)}が偶数であることを意味する。

{p,p'\in P, r,r'\in Q_0}とする。各{q\in r\cap r'}に対して{x_p(q)=x_{p'}(q)}が成り立つとき、任意の自然数{n,m}に対し{V(x_p,r,n)\cap V(x_{p'},r',m) \neq \emptyset}となる(*1)ことが容易にわかる。

 

{X}が完全正規であることを示す。

{X}{T_1}であることは容易に分かるので、正規であることを言う。{H_1,H_2}を交わらない閉集合とし、{A_i=X_0\cap H_i,i=1,2}と置く。

{A_1=\emptyset}ならば{H_1}は開かつ閉なのでこのときは良い。{A_1,A_2\neq \emptyset}とする。

{q_i=\{ p\in q: x_p\in A_i \},r=\{ q_1,q_2 \}}と置いて、

 {D_i=\bigcup \{ V(x_p,r,1):p\in q_i\} }

とおけば、これらは{A_i}{X}での素な近傍であるので、

 {U_1=H_1\cup (D_1-H_2),U_2=H_2\cup (D_2-H_1)}

とすればこれらが{H_1}の素な近傍となる。

完全正規であることを示すために任意に閉集合{H}をとりGδ集合であることを示す。

{r\in Q_0}を任意に取り、

 {G_n=\bigcup \{ V(x_p,r,n):x_p\in X_0\cap H \} \cup (H-X_0)}

とおけば{H=\bigcap_{n}G_n}となるので、以上より{H}はGδ。

これで完全正規であることがわかった。

 

・族正規でないことを示す。

Δ-システム補題(リンクはWiki)を使う。

{\{ \{ x_p \} : p\in P \} }は疎な閉集合族である。この各点の近傍からなる素な族{\{ V(x_p,r_p,n_p) : p\in P \} }は存在しないことを示そう。任意に{x_p,r_p,n_p}をとり、{P_0\subset P}に対して{\mathcal{V}(P_0)=\{ V(x_p,r_p,n_p) : p\in P_0 \}}とおく。

{P}は非可算であるから、⊿システム補題より{P}の非可算部分集合{P'}であって、次を満たすものがある:

 任意の{a,b\in P',a\neq b}に対し、{ r_a\cap r_b = \bigcap_{p\in P'} r_p}

{r'=\bigcap_{p\in P'}r_p}と置く。{r'\neq \emptyset}のときは(*1)から直ちに{\mathcal{V}(P')}が素でないことがわかる。よって{r'\neq \emptyset}である。

{r'}は有限集合であるから、非可算集合{P''\subset P'}であって、任意の{a,b\in P''}に対して{x_a(q)=x_b(q) \ (\forall q\in r'=a\cap b)}となるものがある。このとき (*1)より

 {V(x_a,r_a,n_a)\cap V(x_b,r_b,n_b)\neq \emptyset ,(\forall a,b \in P'')}

となり、{\mathcal{V}(P'')}は素でない。

以上から{\mathcal{V}(P)}は疎とはなり得ない。従って族正規でないことがわかる。◻︎ 

 

 

児玉之宏 永見啓応『位相空間論』岩波書店 1974年

 

パラコンパクト

位相ゼミでパラコンパクトについて少し勉強したので、それに関するまとめを作りました。付録に関しては勉強中だったり書きかけだったりしてアレですが、まあ付録以外はだいたいいけてるはずなので、とりあえず載せときます、はい。

 

www.dropbox.com

まあ難しいですね、難しい。日本人の名前がたくさん出てきて面白いですね。距離空間がパラコンパクトであることの証明を何も見ずに再現できるように練習します。

児玉之宏 永見啓応『位相空間論』岩波書店 1974年(5600円)