貼り合わせに関するメモ

 \require{AMScd}

お久しぶりです。
活動をしているということをもう少し他者にわかるような形で残しておいた方が人生に良い影響を与えそうだということでもう少し更新頻度を高めようと思いました。
この記事は代数幾何における貼り合わせに関していくつかのメモ書きです。
初等的なことですが、誰かの役に立つかもしれないです。
(今後、こんな感じで小さなテーマごとに記事をまとめて「活動してますアピール」に使いたいと思っています)

あと、最近はなんか数学について書くときに「ですます調」(?)になりがちなのではじめに断っておきます。


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《関手的な視点》

最も基本的な貼り合わせは次の補題です:


【貼り合わせの補題:Ha演習II.2.12】
 \left\{ X_i \right\} をスキームの族で i\neq j に対して開部分スキーム  U_{ij} \subset X_i と同型射 \varphi _{ij}:U_{ij}\to U_{ji} が与えられていて、次を満たすとします:
(1) \varphi _{ij}^{-1} = \varphi _{ji} ,
(2) 各 i,j,k に対して \varphi _{ij}(U_{ij}\cap U_{jk}) = U_{ji}\cap U_{jk} ,
(3) 各 i,j,k に対して \varphi _{ik}=\varphi _{jk}\circ \varphi _{ij} .
このとき、次を満たすスキーム X と開埋め込み  f_i:X_i\to X があります:
(1)  \bigcup _i f_i(X_i)=  X ,
(2) f_i(U_{ij})=f_i(X_i)\cap f_j(X_j) ,
(3) f_i=f_j\circ \varphi _{ij} .

これは位相空間として貼り合わせたのち、構造層をゼロ延長して貼り合わせれば構成できます。

これを関手っぽい目線で見るためにいくつかの用語を導入します。
S をスキーム、\mathsf{Sch}_{/S}S-スキームの圏とします。
この記事では \mathsf{Sch}_{/S} 上の層はつねにZariski位相で考えます。
つまり関手 \mathcal{F}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} が層であるとは、任意の S-スキーム T に対して \mathcal{O}pen(T)^{op}\to \mathsf{Set}, U\mapsto \mathcal{F}(U)T 上の層となることを意味します。
h_T=\mathrm{Hom}_S(-,T) と表記します。

【部分関手】
\mathcal{F},\mathcal{G}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を層とし、f:\mathcal{G}\to \mathcal{F} を射(=自然変換)とします。
f単射(=各切断ごとに単射)のとき、\mathcal{G}\mathcal{F}部分層または部分関手と言います。
f表現可能とは、任意の射 h_T \to \mathcal{F} に対してある T' があって \mathcal{G}\times _{\mathcal{F}}h_T\cong h_{T'} となることです。
・さらに h_{T'}\to h_T に対応する射 T'\to T がつねに開(閉)埋め込みとなるとき、\mathcal{G}\mathcal{F}開(閉)部分関手と言い、f開(閉)埋め込みと言います。

定義から明らかに、\mathcal{F}\to h_T が表現可能な射なら \mathcal{F} も表現可能です。
スキーム論では時に関手をスキームと同等かのように扱うことがあります。
そのような考え方の一端を使い、様々な貼り合わせに関する議論を簡略化できないか、というのがこの記事で考えることです。

次の定義をします:

【関手の開被覆
\mathcal{F}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を層とします。
開部分関手の族 \mathcal{F}_i\subset \mathcal{F}\mathcal{F}開被覆であるとは、任意の射 h_T\to \mathcal{F} に対して h_{T_i}\cong \mathcal{F}_i \times _{\mathcal{F}} h_T としたとき、h_{T_i}\to h_T に対応する開埋め込みの族 T_i\to TT開被覆を与えることを言います。

定義から、通常のスキームの開被覆 T=\bigcup _i T_i に対して h_{T_i}h_T開被覆です。

さて、上の貼り合わせの補題を関手により言い換えます:

【表現可能性】
\mathcal{F}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を層として、表現可能関手による開被覆 \mathcal{F}=\bigcup _i h_{X_i} があるとします。
このとき \mathcal{F} も表現可能です。

〔証明〕
h_{U_{ij}}=h_{X_i}\times _\mathcal{F}  h_{X_j} と置きます。
h_{X_i}\to \mathcal{F} は開埋め込みなので対応する U_{ij}\to X_i は開埋め込みです。
また、pullbackの順番を入れ替えることで同型射 U_{ij}\cong U_{ji} を得ます。
これらのデータが冒頭の貼り合わせの補題の条件を満たすことは F が層であることに起因します。
貼り合わせたスキーム X により \mathcal{F} は表現されます。 ◻︎

【表現可能性その2】
S をスキーム、S=\bigcup _i U_i開被覆として、\mathcal{F}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を層とします。
\mathcal{F} の表現可能な部分関手の族 h_{S_i} が次を満たすとします:
・任意のS-スキーム T について、T\to SU_i を経由すれば h_{S_i}(T)=\mathcal{F}(T), そうでなければ h_{S_i}(T)=\emptyset .
このとき h_{S_i}\mathcal{F}開被覆となり、特に \mathcal{F} は表現可能。

〔証明〕
開被覆であることを示すために、任意に S-スキーム T と射 \alpha :h_T\to \mathcal{F} を取ります。
h_T\times _{\mathcal{F}}h_{S_i} \cong h_{T\times _S U_i} が示せれば良いです。
s:T'\to T を取ります。
\alpha(s)\in h_{S_i}(T') となるためには、h_{S_i}(T')\neq \emptyset が必要十分で、つまり T'\to SU_i を経由することが必要十分です。
従って s:T'\to TT\times _S U_i を経由することが必要十分です。
よって  h_T(T')\times _{\mathcal{F}(T')}h_{S_i}(T') \cong h_{T\times _S U_i}(T') となります(これが T' について自然であることは容易にわかります)。◻︎

これらを使ってみます。



《relative Spec》

\mathbf{Spec}
S をスキーム、\mathcal{A} を準連接 \mathcal{O}_S-代数とします。
このとき次を満たす S-スキーム f:X\to S があります:
・任意のアフィン開集合 V\subset S に対して f^{-1}(V) \cong \mathrm{Spec}(\mathcal{A}(V)) ,
・任意のアフィン開集合の( S 上の)包含 U\subset V に対して f^{-1}(U)\subset f^{-1}(V) は同型を通じて \mathrm{Spec}(\mathcal{A}(U))\subset \mathrm{Spec}(\mathcal{A}(V)) と可換.
この X\mathbf{Spec}(\mathcal{A}) などと書きます。

〔証明〕
表現可能性その2を使います。
まず層 \mathcal{F}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set}f:T\to S に対して \mathcal{F}(T) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S\text{-alg}}(\mathcal{A},f_{*}\mathcal{O}_T) と定めます。
S のアフィン開被覆 S=\bigcup _i U_i に対して、\mathcal{F}_i=h_{\mathrm{Spec}(\mathcal{A}(U_i))}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} と置きます。
\mathcal{F}_i(T)T\to SU_i=\mathrm{Spec}(R_i) を経由しないとき \emptyset で、経由するときは  \mathcal{F}_i(T) = \mathrm{Hom}_{R_i\text{-alg}}(\mathcal{A}(U_i),\Gamma (T,\mathcal{O}_T))= \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S|_{U_i}\text{-alg}}(\mathcal{A}|_{U_i},f_{*}\mathcal{O}_T|_{U_i}) です。
さらに包含を i_{U_i}:U_i\to S として f=i_{U_i}\circ f_1 と書けば、i_{U_i}^{*}i_{U_i *}=\mathrm{id} なので  f_{*}\mathcal{O}_T|_{U_i} = f_{1 *}\mathcal{O}_T となって、随伴で \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S|_{U_i}\text{-alg}}(\mathcal{A}|_{U_i},f_{*}\mathcal{O}_T|_{U_i}) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S|_{U_i}\text{-alg}}(\mathcal{A}|_{U_i},f_{1 *}\mathcal{O}_T) \cong \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S\text{-alg}}(\mathcal{A},f_{*}\mathcal{O}_T) となります。
従って層 \mathcal{F}_iT\to SU_i を経由しないときは \mathcal{F}_i(T)=\emptyset で経由するときは \mathcal{F}_i(T)\cong \mathcal{F}(T) となるものです。
\mathcal{F}_i たちは表現可能なので、表現可能性その2から \mathcal{F} の表現対象が取れて、これが所望のスキームです。 ◻︎

(注)
\mathcal{A} の準連接性は \mathrm{Hom}_{R_i\text{-alg}}(\mathcal{A}(U_i),\Gamma (T,\mathcal{O}_T))= \mathrm{Hom}_{\mathcal{O}_S|_{U_i}\text{-alg}}(\mathcal{A}|_{U_i},f_{*}\mathcal{O}_T|_{U_i}) の等号に使われています。

上の証明の思想は、愚直に貼り合わせる場合に貼り合わせの条件は関手性(層であること)から来るのだから、スキームも層っぽく考えて初めから全部関手の話で済ませてしまえばいいじゃん、という感じです。


【例:正規化】
代数多様体 X の各開集合 U\subset X に対して \mathcal{O}(U) の正規化を \mathcal{A}(U) とすれば \mathcal{A} は準連接 \mathcal{O}_X-代数になります。
すると X の正規化が \tilde{X}=\mathbf{Spec}(\mathcal{A}) \to X により得られます。◻︎


【例:ベクトル束
S をスキーム、\mathcal{E}S 上のランク n 局所自由層とします。
関手 V:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} , T\mapsto \Gamma (T,\mathcal{E}_T) = \mathrm{Hom}_T(\mathcal{O}_T,\mathcal{E}_T) について考えます( V(T)\to V(T') は引き戻しで出します)。
ここで \mathcal{E}_T\mathcal{E}T への引き戻し、つまり射を f:T\to S とすれば \mathcal{E}_T = f^{*}\mathcal{E} のことです。
切断 s\in \Gamma (T,\mathcal{E}_T) を与えることは、射 \mathcal{O}_T\to \mathcal{E}_T を与えることに等しいですが、双対を取って \mathcal{E}^{\vee}_T\to \mathcal{O}_T が1:1に対応します。
するとこれは \mathcal{O}_T-代数の射 \mathrm{Sym}(\mathcal{E}^{\vee})_T\to \mathcal{O}_T と1:1に対応し、従って射 T\to \mathbf{Spec}(\mathrm{Sym}(\mathcal{E}^{\vee})) と1:1に対応します。
よって関手 V\mathbf{Spec}(\mathrm{Sym}(\mathcal{E}^{\vee})) により表現可能になります。
\mathbf{V}(\mathcal{E}) = \mathbf{Spec}(\mathrm{Sym}(\mathcal{E})) と置き、局所自由層 \mathcal{E} に付随するベクトル束と言います。



《グラスマン多様体

次にグラスマン多様体の構成を貼り合わせの議論でやってみます。
一般に、代数幾何でも微分幾何でも多様体しか考えていない場合では、グラスマン多様体や旗多様体GL_n の適切な部分群、たとえば旗多様体であれば旗を固定するような自己同型のなす部分群=上三角なもの全体などによる商として構成できますが、一般のスキーム上で商の構成はしばしば面倒な問題を孕んでいるので、別の構成があっても良いように思います。

【定義:Grassmannian】
\mathcal{E} をスキーム S 上のランク n の局所自由層とします。
このとき、関手 \mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E}):\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を次で定めます:
\mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E})(T)\mathcal{E}_T の剰余 q:\mathcal{E}_T \to \mathcal{F}\mathcal{F} がランク r の局所自由層となるものの同値類で、
q:\mathcal{E}_T \to \mathcal{F},q':\mathcal{E}_T \to \mathcal{F}' が同値であることは \ker (q) = \ker (q') となること,
\mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E})(T)\to \mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E})(T') はpullbackにより引き起こされる商を対応させる写像
この関手 \mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E}) の表現対象を \mathrm{Grass}(r,\mathcal{E}) と書き、Grassmannianと言います。 特に r=1 のときのGrassmannianは射影束と呼ばれ、\mathbb{P}(\mathcal{E}) と書かれます。 ◻︎

最初に、\mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E}) は層であることに注意しておきます。
それは局所的な \mathcal{E} の商が貼り合えば全体での \mathcal{E} の商が得られるからです。

Grassmannianの存在を示します。

【シンプルな場合】
S=\mathrm{Spec}(A) をアフィン、V をランク n の自由 \mathcal{O}_S-加群とすると、\mathfrak{G}rass(r,V) は表現可能。

〔証明〕
表現可能関手による開被覆を作ります。
ランク r の直和因子 W\subset V を取り、K=V/W\subset V のsplitを固定します。
G_W:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を次で定めます:
G_W(T)\subset \mathfrak{G}rass(r,V)(T) であり、商 q:V_T\to \mathcal{F}G_W(T) に属するのは包含との合成 W_T\to V_T \to \mathcal{F} が同型となるとき、またその時に限る。
つまり G_W(T) = \mathrm{Hom}_T(K_T,W_T) = \Gamma (T,(K^{\vee}\otimes W)_T) です。
よってこれは \mathbf{V}(K\otimes W^{\vee}) により表現可能です。
次に G_W たちが \mathfrak{G}rass(r,V)開被覆となることを示します。
任意に \alpha :h_T\to \mathfrak{G}rass(r,V) を取れば米田の補題でランク r の商 V_T \to \mathcal{F} と対応します。ここでU_W=T\setminus \mathrm{Supp}(\mathrm{coker}(W_T\to \mathcal{F})) と置きます。
U_W は合成 W_T \to \mathcal{F}全射、つまり同型(同じランクの局所自由層の間の全射は同型!!)になる T の開集合です。
このとき V_T\to \mathcal{F}はすでに全射なので、V の基底を固定してそのうち r 個を任意に選ぶことで T=\bigcup _W U_W がわかります。
あとは h_T\times _{\mathfrak{G}rass(r,V)} G_W \cong h_{U_W} を示せばGrassmannianの存在がわかります。
S 上の射 s:T'\to T を取って \alpha (s)\in G_W(T') となる条件を調べます。
\alpha (s) :V_{T'}\to s^{*}\mathcal{F} が同型 W_{T'}\to s^{*}\mathcal{F} を引き起こすには、W_{T'}\to s^{*}\mathcal{F}全射することが必要十分で、従って s^{*}\mathrm{coker}(W_T\to \mathcal{F}) = 0 となることが必要十分です。
つまり sU を経由することが \alpha (s)\in G_W(T') となる必要十分条件となり、 h_T(T')\times _{\mathfrak{G}rass(r,V)(T')} G_W(T') \cong h_{U_W}(T') がわかりました。◻︎

【一般の場合】
S をスキーム、\mathcal{E} をランク n の局所自由 \mathcal{O}_S-加群とすると、\mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E}) は表現可能。

〔証明〕
S=\bigcup _i U_i\mathcal{E}|_{U_i} が自由となるようなアフィン開被覆とします。
G_i =h_{\mathrm{Grass}(r,\mathcal{E}|_{U_i})} :\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} と置きます。
すると G_i(T)T\to SU_i を経由しないときは \emptyset で、経由するときはちょうど G_i(T)=\mathfrak{G}rass(r,\mathcal{E})(T) です。
よって表現可能性その2から表現対象が存在します。◻︎

Grassmannianの上には、米田の補題\mathrm{id} に対応する商 \mathcal{E}_{\mathrm{Grass}(r,\mathcal{E})} \to \mathcal{U} があります。
これをトートロジカル商と言います。 r外積をとることで全射 (\bigwedge ^r \mathcal{E} )_{\mathrm{Grass}(r,\mathcal{E})} \to \bigwedge ^r \mathcal{U} を得て、この全射は射影束への射 \mathrm{Grass}(r,\mathcal{E})\to \mathbb{P}(\bigwedge ^r \mathcal{E}) に対応します。
この射をPlücker埋め込みと言います。

実際に埋め込みになっていることはモノ射(層の射として単射なので)かつproper射(付値判定法などなんでも良い)であることから従います(他に良い方法があるかも)(この方法で射影束の表現可能性だけからGrassmannianの表現可能性がわかる?)。

似たものに多様体というものがあります。定義だけ書いておきます:

【旗多様体
1\leq n_1 \lneq n_2 \lneq \cdots \lneq n_r \leq n 自然数の列として、S をスキーム、\mathcal{E} をランク n の局所自由層とします。
関手 \mathfrak{F}lag(n_1,\cdots ,n_r ; \mathcal{E})  :\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を次で定義します:
\mathfrak{F}lag(n_1,\cdots ,n_r ; \mathcal{E})(T)T 上の商の列 \mathcal{E}_T\to \mathcal{F}_1 \to \cdots \to \mathcal{F}_r で各 \mathcal{F}_iT 上ランク n_i の局所自由層となるものの同値類で、
・同値であるとは各 \ker (\mathcal{E}_T\to \mathcal{F}_i) が等しいこと、
・射の対応はpullbackで定める。
\mathfrak{F}lag は層になることが \mathfrak{G}rass と同様にわかります。
この層の表現対象を多様体と言います(一般のスキーム上で旗「多様体」と言うのかわかりませんが...)。
各商 \mathcal{E}_T\to \mathcal{F}_i に対応する点 \in \mathfrak{G}rass(n_i,\mathcal{E}) をとることで層の射 \mathfrak{F}lag(n_1,\cdots ,n_r;\mathcal{E}) \to \mathfrak{G}rass(n_1,\mathcal{E}) \times \cdots \times \mathfrak{G}rass(n_r,\mathcal{E}) が出ますが、これが閉埋め込みであることが示せるので、右辺がGrassmannianの直積で表現されることから、旗多様体はGrassmannianの直積の閉部分スキームとして定まります。


《relative Proj》

まずはアフィンスキーム上でのProj構成のもつ普遍性を調べることから始めます。
R を環、A=\bigoplus _{d\geq 0}A_dA_0=R となる次数付き R-代数( R-代数の構造は0次への包含)で R-代数として A_1 で生成されるもの(今後たんに次数付き環と言った場合はこの状況と同様とします)とし、XS=\mathrm{Spec}(R)-スキームとします。
R 上の射 X\to \mathrm{Proj}(A) を与えることがどういうことかを X 上の層の言葉で言い換えます。

簡単のため X はアフィンとします。つまりある R-代数 P があって X\cong \mathrm{Spec}(P) とします。
まず、射 X\to \mathrm{Proj}(A) を与えることは、射影のsection X\to X\times _S \mathrm{Proj}(A) を与えることに等しいです。
X\times_S\mathrm{Proj}(A) = \mathrm{Proj}(A\times _R P) なので、射 X\to \mathrm{Proj}(A) を与えることがどう言うことか調べるには、射影 p:\mathrm{Proj}(A) \to S のsection s:S\to \mathrm{Proj}(A) を与えることがどう言うことかを調べれば良いです。
\mathrm{Proj}(A) 上には \mathcal{O}(1) = \tilde{A(1)} という可逆層があるので、\mathcal{L}=s^{*}\mathcal{O}(1) という S 上の可逆層を得ます。
一方自然な射 p^{*}p_{*}\mathcal{O}(1)\to \mathcal{O}(1) がありますが、これは A_1\otimes _R A\to A(1) により出る全射なので、p\circ s=\mathrm{id} から全射 p_{*}\mathcal{O}(1)\to \mathcal{L} を得ます。
大域切断を取れば A_1\to \Gamma (\mathrm{Proj}(S),\mathcal{O}(1)) \to \Gamma (S,\mathcal{L}) が出ることになります。
n 回ひねって足し合わせると \psi:A\to \Gamma _{*}(\mathcal{L}) という次数付き環の射が出ます。
また \mathcal{O}(1)A_1 からくる大域切断で生成されることから、\mathcal{L} も大域切断で生成されます。
こうして直線束 \mathcal{L} と次数付き R-代数の射 \psi :A\to \Gamma _{*}(\mathcal{L})\mathcal{L} は大域切断 \psi(A_1) で生成される、というデータを得ました。
この \mathcal{L}\psi は同型を除き一意的に決まるデータになります。

この構成が射と1:1に対応するものであることを、関手の表現対象としての \mathrm{Proj} 構成により観察します:

【表現対象としてのProj】
S=\mathrm{Spec}(R) をアフィン、A=\bigoplus _{d\geq 0}A_d を次数付き R-代数とします。
関手 \mathfrak{P}roj(A):\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を次で定めます:
\mathfrak{P}roj(A)(T)R-スキーム T 上の直線束 \mathcal{L} と次数付き R-代数の射 \psi :A\to \Gamma _{*}(\mathcal{L})\mathcal{L}\psi (A_1) で生成されるものの組 (\mathcal{L},\psi) の同値類で、
(\mathcal{L},\psi) ,(\mathcal{L}',\psi') が同値とは、同型 \alpha :\mathcal{L}\to \mathcal{L}' で次数付き R-代数の射として \psi'=\Gamma _{*}(\alpha)\circ \psi となるものが存在すること、
\mathfrak{P}roj(A)(T)\to \mathfrak{P}roj(A)(T') はpullbackで引き起こされる写像
このとき関手 \mathfrak{P}roj(A)\mathrm{Proj}(A) により表現されます。

〔証明〕
\mathfrak{P}roj(A) は層になることが容易にわかります。
よって表現可能関手による開被覆を作れば良いです。
f\in A_1 に対して h_f=h_{\mathrm{Spec}(A_{(f)})}:\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} と定めます。
h_f たちが \mathfrak{P}roj(A)開被覆となれば良いです。\mathcal{L}=\mathcal{O}_T と置きます。
S 上の射 f:T\to \mathrm{Spec}(A_{(f)}) に対応して R-代数の射 \alpha :A_{(f)}\to \Gamma (T,\mathcal{O}_T) があるので、A_d \xrightarrow{f^{-d}} A_{(f)} \xrightarrow{\alpha} \Gamma (T,\mathcal{O}_T) を並べることで次数付き R-代数の射 A\to \Gamma _{*}(\mathcal{O}_T) を得ます。
こうして層の単射 h_f\to \mathfrak{P}roj(A) が得られます。
\alpha :h_T\to\mathfrak{P}roj(A) を取り h_T\times _{\mathfrak{P}roj(A)}h_f を調べるため、任意に T' と射 s:T'\to T を取り、\alpha(s)\in h_f(T') となる条件を求めます。
\alpha に対応する T 上の組 (\mathcal{L},\psi) を取ります。
T' へ引き戻して (\mathcal{L}',\psi')\in h_f(T') となるには、まず \mathcal{L}\cong \mathcal{O}_{T'} が必要です。
さらにこの同型のもとで \psi'A\to \bigoplus _d A_d\cdot f^{-d}\to \Gamma _{*}(\mathcal{O}_{T'}) と対応するには、f\in A_1f\mapsto 1\mapsto 1\in \Gamma (T',\mathcal{O}_{T'}) と写ることから \mathrm{Supp}(\psi'(f))=\emptyset 、つまり T'_{\psi'(f)}=T' となることが必要です。
これはつまり、s:T'\to TT_{\psi(f)}\subset T を経由するということです。
逆に sT_{\psi(f)}\to T を経由すれば、\mathcal{L}'=s^{*}\mathcal{L}|_{\psi(f)}\cong s^{*}\mathcal{O}_{T_{\psi(f)}}=\mathcal{O}_{T'} となり、\psi'A\xrightarrow{\psi} \Gamma _{*}(\mathcal{L}) \to \Gamma _{*}(\mathcal{L}|_{\psi(f)})\cong \Gamma _{*}(\mathcal{O}_{T_{\psi(f)}}) を経由するので同型 \mathcal{L}'\cong \mathcal{O}_{T'} を経て A\to \bigoplus _d A_d\cdot f^{-d}\to \Gamma _{*}(\mathcal{O}_{T'}) と同値です。
よって h_T \times _{\mathfrak{P}roj(A)}h_f \cong h_{T_{\psi(f)}} がわかり、\mathcal{L}\psi(A_1) で生成されていることから h_f たちは \mathfrak{P}roj(A)開被覆となります。 ◻︎

(注1)
上の証明は \mathrm{Proj} 構成を知らない状態でも有効です。

(注2)
環として1次部分で生成される、という仮定を外した場合、一次部分の元による D_+(f) たちで開被覆できないため、もう少しちゃんとやらないといけなくて難しくなります。
この場合には A^{(d)}\to \Gamma _{*}(\mathcal{L}) という次数付き環の射で \mathcal{L}\psi(A_d) で生成されているとして、組 (d,\mathcal{L},\psi) の同値類を d に渡ってすべて考えます。
ここで A^{(d)}=\bigoplus _{n\geq 0}A_{nd} です。
そうすると関手 \mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set}\mathsf{Sch}_{/S} の"開基"の上でしか定義できなくなってしまい、少し面倒です。
細かい部分はStacks Projectを参照してください。
一次部分で生成されないものを使いたくなる場面は想像できませんが、必要になることもあるんですかね?

表現対象としての表示ができれば、一般のスキーム上で簡単に貼り合わせることができます(表現可能性その2):
\mathcal{A}=\bigoplus _{d\geq 0}\mathcal{A}_d を次数付き準連接 \mathcal{O}_S-代数とします。
ここでの次数付き環についての取り決めから、これは \mathcal{A}_0 = \mathcal{O}_S であることと \mathcal{O}_S-代数として \mathcal{A}_1 により局所的に生成されることを要請しています。
このとき次を満たす S-スキーム f:X\to S があります:
・任意のアフィン開集合 V\subset S に対して f^{-1}(V) \cong \mathrm{Proj}(\mathcal{S}(V)) ,
・任意のアフィン開集合の( S-上の)包含 U\subset V に対して f^{-1}(U)\subset f^{-1}(V) は同型を通じて \mathrm{Proj}(\mathcal{S}(U))\subset \mathrm{Proj}(\mathcal{S}(V)) と可換.
この X\mathbf{Proj}(\mathcal{A}) などと書きます。
\mathbf{Proj}(\mathcal{A}) を構成するためには、S のアフィン開集合 \mathcal{A}(U) 上の \mathrm{Proj}(\mathcal{A}(U)) たちにより被覆される関手を作れば良いです:

【relative Proj】
S をスキーム、\mathcal{A}=\bigoplus _{d\geq 0}\mathcal{A}_d を次数付き準連接 \mathcal{O}_S-代数とします。
\mathfrak{P}roj(\mathcal{A}):\mathsf{Sch}_{/S}^{op}\to \mathsf{Set} を次で定めます:
\mathfrak{P}roj(\mathcal{A})(T)T 上の直線束 \mathcal{L} と次数付き \mathcal{O}_T-代数の射 \psi :A_T\to \bigoplus _{n\geq 0}\mathcal{L}^{\otimes n}\psi _1:(\mathcal{A}_1)_T \to \mathcal{L}全射となるものの組 (\mathcal{L},\psi) の同値類で、
(\mathcal{L},\psi) ,(\mathcal{L}',\psi') が同値とは、同型 \alpha :\mathcal{L}\to \mathcal{L}' で次数付き \mathcal{O}_T-代数の射として \psi'=\alpha \circ \psi となるものが存在すること、
\mathfrak{P}roj(A)(T)\to \mathfrak{P}roj(A)(T') はpullbackで引き起こされる写像
このとき関手 \mathfrak{P}roj(\mathcal{A}) は表現可能。

〔証明〕
S のアフィン開被覆 S=\bigcup U_i を取り、P_i=h_{\mathrm{Proj}(\mathcal{A}(U_i))} とおけば、射 T\to SU_i を経由すれば \mathfrak{P}roj(\mathcal{A})(T) = P_i(T) で経由しなければ P_i(T)=\emptyset なので P_i たちは \mathfrak{P}roj(\mathcal{A})開被覆となって \mathfrak{P}roj(\mathcal{A}) は表現可能です。 ◻︎

またこの開被覆から表現対象 \mathrm{Proj}(\mathcal{A}) がはじめに述べたProj構成の条件を満たすことは明らかです。

(注)
表現可能関手としてのProjの表示から、明らかに基底変換とProj構成が可換になります(SpecでもGrassmannianや旗多様体でも同様)。
すると代数空間では逆にProj構成を上の関手として定めることで、各"開集合"(=スキームからのエタール射)の上でもとのProj構成となっているような代数空間ができます。
そうすると代数空間のblow-upなどスキーム上で行われた"代数幾何学"を代数空間の上で行えそうだなと思ったりします。
実際どれくらいできるんでしょうか?
Stacks Projectを見ると膨大な量の代数空間に関する記述があって情報が処理しきれないですが...



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